大脳領野形成機構

Q. 脳の領野(特に前頭前野)の大きさはどのようにして決まるのか?
哺乳類の大脳新皮質は、細胞構築の異なる細胞集団が異なる場所に配置しており、それぞれの場所は「領野」として分類されている (ブロードマンの脳地図)(Brodmann 1909)。それぞれの領野は、特異的な神経ネットワークを築くことで固有の脳機能を担う。 例えば、視覚情報を処理する視覚野は大脳新皮質の後方に位置し、運動機能を担う運動野は前方に位置する。その中でも大脳新皮質の 最も前方に位置する前頭前野は、人格の発現、認知行動の計画と決定、社会的行動の調節など高度で複雑な脳機能に大きく寄与する領野であり、 特にヒトにおいて顕著に大きいという特徴を持つ。興味深いことに、自閉症や統合失調症などの神経発達症において前頭前野の大きさに 異常が見られるという報告もあり、前頭前野の大きさの違いが神経発達症の発症に関与する可能性が考えられている。 しかし、前頭前野が発生の過程でどのような分子メカニズムにより形成されるのかは殆どわかっていない。 我々は、マウスモデルとヒトiPS由来大脳オルガノイドを用いて、前頭前野のサイズ決定に貢献する分子を明らかすることを目指している。