ASKファミリーによるウイルス感染防御機構の使い分けについて
ウイルス感染時に分泌された?型IFNは警告シグナルであり、自身とその周囲の細胞にウイルス増殖が阻害される抗ウイルス状態を確立する。 一方、細胞死した細胞は自殺によってウイルスの増殖・伝搬を阻害する。2つの応答は宿主のダメージを引き起こすが、 状況に応じた使い分けによってダメージが回避できる。しかしながら、ウイルスに感染した細胞が二つの応答を使い分けているのか、 また使い分けているならばどのような仕組みに基づいているのかはこれまで解明されていなかった。 我々は、MAP3KのASK1がウイルス感染に対する?型IFNの産生と細胞死の両方の誘導に貢献すること、 更にASK1の機能を調節するタンパク質ASK2が、ASK1による?型IFNの誘導には関与しない一方、細胞死の誘導にのみ貢献することを明らかにした。 このことから、?型IFN産生と、細胞死という二つの応答がASK1とASK2によって使い分けられていることが世界で初めて明らかになった(Okazaki et al., Science Signaling, 2015)。 更に、この二つの応答の使い分けは組織・細胞種によって異なっており、例えば代替が可能な上皮組織(皮膚や肺など)では細胞死が優先される一方、 修復能が低い非上皮組織(脳など)ではIFN産生が優先される可能性も示されている。
それでは、ASK1とASK2はいかなる仕組みによって?型IFN産生と細胞死を使い分けているのであろうか。 我々はその仕組みを更に探索した結果、抗ウイルス応答分子IPS-1の翻訳後修飾や結合因子が鍵となることを見出している (Okazaki et al., in preparation; Aoyama et al., bioRxiv, 2020)。本研究によって、抗ウイルス応答の使い分け機構の全容と その生体における役割が明らかになっていくと期待出来る。